防御的になりやすい相手にフィードバックを伝えるなら、本題に入る前に、まず会話から「責められている」感じを減らすことです。人のいないところで、出来事からあまり時間を空けずに、話題はひとつに絞ります。相手の人柄ではなく具体的な行動とその影響を伝え、解決策を出す前に相手の見方を聞きます。反発されても、強く押し返さないこと。相手の気持ちを受け止め、事実に戻り、続きは別の日にする覚悟も持っておきます。
ここまでが短いバージョンです。以下に長いバージョンを書くのは、フィードバックの場で同じ失敗を、認めたくないほど何度も繰り返してきたからです。こちらが何か指摘すると、相手の肩にぐっと力が入り、その瞬間からお互い相手の話をちゃんと聞けなくなる。そういうパターンです。
そもそも、なぜ人は防御的になるのか#
防御的な反応は、頑固さとは違います。少なくとも、頑固さから始まることはめったにありません。脅かされたと感じたときの反応で、フィードバックは私たちが思っている以上に人を脅かします。表向きはプルリクエストや守れなかった締め切りの話をしていても、相手に聞こえているのは「自分はこの仕事に向いているのか」「このチームにいていいのか」「何か月も前から内心そう思われていたのか」という問いです。
いったんそう感じると、相手の注意はこちらの言いたいことではなく、自分を守ることに向かいます。強く言い返せば、その脅威が本物だと裏付けるだけです。なので、以下に書くうまくいく方法の大半は、まず場の緊張を下げて、それから中身に入る、という順番の話です。
もうひとつ覚えておくといいのは、最初から傷を負った状態でこういう会話に臨む人もいる、ということです。批判するときしか口を開かない上司がいた、ミスをすると干される職場だった、など。その過去を一回の面談でどうにかすることはできません。ただ、軽い一言に不釣り合いなほど大きな反応が返ってくることがある理由は、これで説明がつきます。
話す前に#
フィードバックの会話は、たいてい始まる前に勝負がついています。昔はやっていなかったけれど、今は気をつけていることがいくつかあります。
話題はひとつに絞ります。5つも溜め込んでいたら、相手にはフィードバックではなく起訴状に聞こえます。残りの4つは後回しで構いませんし、結局ひとつ目の症状だった、ということもよくあります。
早めに伝えます。6週間前の出来事についてのフィードバックは「なんで今さら言うんですか?」と受け取られます。もっともな疑問で、うまい答えはありません。出来事から1〜2日後くらいがちょうどいいと思っています。記憶が新しいうちで、かつお互いの頭が冷えている頃です。
人のいないところで伝え、できればチャットは避けます。文字だとトーンが抜け落ちますし、身構えている読み手は、その抜けたトーンを最悪のバージョンで補ってしまいます。チームがリモートだったりタイムゾーンをまたいでいたりして、どうしても文章で伝えるしかないときは、短くまとめて通話を提案します。
そして、自分の状態を確認します。こちらが苛立っていると、どんな言葉を選んでも、相手は最初の一文で察します。苛立ちが収まるまで待っていればずっとうまくいったはずのフィードバックが、いくつも思い当たります。
実際に何と言うか#
私が何度も立ち戻る型は、一般に「状況・行動・影響」(SBI)と呼ばれるものです。いつ起きたか、相手が何をしたか、それが何を引き起こしたか。ポイントは、どの部分も観察できる事実だということです。相手がどういう人間かについては何も言わず、何が起きたかだけを話します。
実際の違いを見てみます。たとえば、ある開発者が金曜の午後にレビューを待たずに変更をマージして、週末に決済が動かなくなったとします。
相手が壁を作るバージョン:「いつも急いで出しますよね。もっと慎重になってください」
まだ望みがあるバージョン:「金曜に決済まわりの変更がレビューなしで入って、土曜に数時間、決済が止まっていました。何があったのか知りたいんです。不注意だったとは思っていないので」
後者は、出来事をひとつに絞り、それで何が失われたかを率直に伝え、最後に相手の善意を前提にしています。いちばんダメージが大きいのは「いつも」「一度も〜ない」という言葉です。一度の出来事を人格の評価に変えてしまいますし、相手はすぐさま、こちらが間違っていることを示す反例を思い浮かべます。
観察を自分のものとして言うことも心がけています。「〜に気づきました」「〜が気になっています」と言えば、これはあくまで私の見方で、私の側から差し出しているものだと正直に示せますし、私が何かを見落としている余地も残せます。実際、見落としていることはよくあります。
それから、話すのをやめて聞きます。「そちらからはどう見えていましたか?」たいていは、私の知らなかった事情があります。誰か別の人が決めた締め切りだったとか、レビュアーが病欠していたとか。そういう事情がなかったとしても、この質問をすれば、これは判決ではなく会話なんだと相手に伝わります。
フィードバックは、次の一手を添えるとずっと受け取りやすくなります。問題点を並べるのではなく、「次からは、〜してみませんか」。その次の一手が相手の口から出てくれば、なお良いです。
それでも反発されたら#
全部正しくやっても、抵抗されることはあります。反発にはいくつか見分けのつく型があって、それぞれ少しずつ違う対応が要ります。
いちばん多いのは否定です。「そんなことはありませんでした」。ここで言い争わないこと。コミットやメッセージ、日付など、お互いに確認できるものに戻って、自分が何を見落としているのかを聞きます。事実そのものに本当に食い違いがあるなら、「お互いもう一度確認して、明日続きを話しましょう」で構いません。
次に、話をそらすパターン。「でも要件がころころ変わったので」「〇〇さんもやってますよ」。たいてい一理あるので、退けずに認めます。「それはその通りで、要件の問題も直さないといけませんね」。そのうえで、そっと話を戻します。「それとは別に、レビューの手順について話したいんです」
逆襲、たとえば「そっちだってしょっちゅうレビューなしでマージしてるじゃないですか」は、同じ調子で返したくなるのをこらえるのがいちばん難しいパターンです。ひと呼吸置きましょう。相手の言う通りなら、そう認めます。それが場の温度を下げるいちばんの近道ですし、相手に求めているオープンさを自分が先に示したことにもなります。そのうえで、元の話に戻ります。
心を閉ざすパターン、つまり黙り込んだり「はいはい、おっしゃる通りです」と言ったりするのは、同意に見えて同意ではありません。私はそれを柔らかく言葉にします。「あまりうまく伝わらなかったみたいですね。それで大丈夫です」という感じで、続きはまた後でと提案します。引いてしまった人に無理やり答えさせても、返ってくるのは本心ではない答えだけです。
謝りすぎ(「本当にダメですね、すみません」)も防御反応で、向きが内側になっているだけです。先に自分で自分を批判することで、身を守っているわけです。これはあくまで特定のひとつの件で、仕事ぶり全体の話ではないと安心してもらい、これからどうするかの話に移ります。
どのパターンでも、私が守ろうとしているルールはひとつ、相手のテンションに合わせないことです。相手が防御的になると、こちらもつい防御的になりがちですが、それをやると会話は確実に沈みます。自分が落ち着いていれば、場の温度はたいてい自然に下がっていきます。「聞いていて、もどかしいですよね」と相手の気持ちを口に出すのも効きます。緊張がないふりをするより、ずっといいです。
引き際を知る#
どれも効かず、相手の壁が崩れないこともあります。そこで押しても何も得られません。会話をいったん置いて、落ち着いた頃に、1〜2日空けて仕切り直せばいいんです。フィードバックの中身は明日になっても変わりませんし、ひと晩寝かせると、人はずっと冷静に振り返れるものです。これまでのフォローアップの会話でいちばん良かったもののいくつかは、相手の「この前言われたこと、考えてみたんですけど」という一言から始まりました。
これを身につけるのに、一番時間がかかりました。
話したあとで#
その後の1週間に起きることは、会話そのものと同じくらい大事です。相手が行動を変えたら、気づいたことを、はっきり、早めに伝えます。そうすれば、私からのフィードバックが悪い知らせばかりではないとわかってもらえますし、次の会話もしやすくなります。
それから、タイミングが合えば、フィードバックがどう受け止められたかを聞きます。「今の伝え方はフェアでしたか?」と聞けば会話のバランスが取れますし、相手に期待しているオープンさを自分から示せます。マネジメントの立場になってからはこれを習慣にしていて、自分の頭の中では明確だったのに口に出したらそうでもなかった、というケースを何度か拾えました。
要するに#
本題に入る前に、まず脅威を下げること。話題はひとつに絞り、人のいないところで早めに切り出し、相手の人柄ではなく行動とその影響を伝え、解決策を出す前に相手の言い分を聞きます。反発されても同じ調子で返さないこと。気持ちを受け止め、事実に戻り、いったん止めて別の日に続ける覚悟を持っておきます。そして、フォローアップを忘れずに。信頼が築かれるのは、会話のあとの会話だからです。
